風さやか開発ストーリー
信州の清々しい空気のもとで育てられたことをイメージして名付けれらた長野県オリジナル米「風さやか」。上品で優雅な旨味と甘味を感じ、冷めてもおいしいのが特徴です。そして、生産者目線では、中晩生で暑さに強いという、育てやすさも魅力とのこと。農業試験場育種部の髙松光生担当研究者(当時)に、お話を伺いました。
良いものを選ぶより、悪いものを捨てることが大事
風さやかは平成25年3月に品種登録されました。開発が始まったのは平成12年。開発は、どのようなものを作るかという育種目標を立てることから始まります。コメといえば、全国の作付けの3分の1以上を占める「コシヒカリ」。そこで、コシヒカリに負けないほどおいしくて、倒れにくく、たくさん採れるコメを目指そうと決めました。
まず、親となる2品種を選び、母親になるイネのめしべに、父親になるイネの花粉を振りかけて交配を行います。風さやかは、母親は国の試験場で育成された「北陸178号」という、草丈が短くて倒れにくく、収量が多いもの。父親は長野県で育成した品種「ゆめしなの」で、コシヒカリに近い味で、病気にも強いものです。当時、県内で作られるコメも約8割がコシヒカリだったので、コシヒカリと少しずらして田植えや収穫ができるような中晩生ということもポイントになりました。
栽培と収穫を何度か行い、性質がある程度安定してから、個体選抜をします。同じ組み合わせの中でも、父親寄りの性質、母親寄り性質を持つものがあるんですよ。その中から目的に合ったものを選んでいきます。良いものを選ぶというより悪いものを捨てるということが大切。それが一番難しいですね。データはもちろんですが、見た目、あとは収穫したものをご飯にして食べてみてどうかなど、総合して選ぶことを繰り返していきました。
生産者が増えて、食べてくれる人も増えることがやりがいに
品種登録を出願したのは平成23年。そこまでには11年がかかりましたが、コメの育成からすると順調と言えるんじゃないでしょうか。平均して15年、それ以上かかるものもあります。
風さやかの場合、平成22年に猛暑でコメの品質低下が問題になったことが一つの転機になりました。コシヒカリはあまり暑さに強くないのですが、それに対して風さやかは高温にも耐えられる品種だということが分かりました。たまたまこのタイミングで、気温が高い年になり、時代にちょうどはまった、というのは幸運だったのかもしれません。
現在、長野県の水稲の面積は約3万3000ヘクタールで、風さやかは、コシヒカリ、あきたこまちに次いで第3の品種となっています。数字としてはまだ全体の3%くらいなのですが、年々増えてきています。やっぱり、農家の皆さんに作ってもらえるというのが大切で、それがコメの評価の証になります。生産者が増えて、採れるコメが増えることによって、「おいしい」と言って食べてくれる人も増える。今シーズンからは、ロゴマークを活用して統一した米袋での販売も始まるので、スーパーなどで風さやかがたくさん並ぶのも楽しみですね。