菌床トリコデルマ病(きのこ/エノキタケ)
病徴と診断
トリコデルマ属菌による病害で、培養中にきのこ菌糸を侵食する。はじめは白色の菌糸が繁殖(ダニの媒介による被害では小型コロニーが多数出現)し、白色の粉を吹いたような塊を生じる。塊は徐々に色づき、菌床全体に蔓延して培養ビン内が緑色になる。桃色、茶色を呈するトリコデルマ菌も存在する。本病による被害は培養ビン内が緑色になるため、比較的発見しやすい。ただしエノキタケでは培養日数が短いため、培養ビンが緑色を呈する前に菌かきに至る場合もある。培養ビンの着色に気付かずに菌かきを行うと、被害が拡大してしまう。本病菌の分離には、RBC培地またはRM3培地を用いる(https://www.agries-nagano.jp/research/genre03)。本病菌の分離は、被害ビンの菌叢から直接トリコデルマ菌を釣菌するか、栽培施設の疑汚染場所から拭き取り採取した試料を用いて、上記の培地に画線等する。25℃で培養後、特徴的なコロニーを観察し、さらに顕微鏡観察して本病害であるか診断する。
発病条件
本病は、糸状菌のトリコデルマ属菌が原因菌である。胞子の空中浮遊率は低く、被害発生の要因はダニ等の微小動物による媒介や、人やモノに付着した原因菌の侵入である。初夏~晩夏にかけての暑い季節の被害報告が多い。この季節はダニ類等の活動が活発となる時期と重なるので、被害が拡大しやすい。培養時の被害ビンを見落としてそのまま菌かきをしてしまうと、菌かき機による大規模な二次的感染が生じることがある。
防除方法
1.被害ビン・株の抜き取り。抜き取り後は直ちに殺菌処分
2.ダニ等微小動物の侵入防止対策
3.菌かき機刃の除菌等
4.施設内外の消毒槽の設置等(靴裏等の除菌)
5.施設内の清掃および除菌