- 2020.02.06
- お知らせ
- 全試験場
試験場だより 令和2年2月号(521号)
農業試験場
- 水田農業トリプルアップ研修会が開催されました
水田農業を取り巻く情勢の変化に伴う諸課題に対応するため、令和2年1月15(水)~16日(木)に安曇野市(三郷公民館講堂)で「令和元年度 水田農業トリプルアップ研修会」が開催されました。
米の「ブランド力アップ」に関しては、高温障害発生のメカニズムや各種病虫害対策として、近年増加傾向にある斑点米の原因となるカメムシの対策技術などが示されました。温暖化の進行に伴い、長野県においても1等米の高い割合維持・向上が大きな課題となっています。また、オリジナル品種のブランド化について、麦類、大豆、そばについても有望系統や、収量、品質向上対策が紹介されました。「収益力アップ」に関しては、近年注目を集めているスマート農業技術に関して、伊那市の農事組合法人田原の取組が紹介され、最新機器を利用した感想が示されました。また、会場ではドローン、水田センサー、通信設備などの実機も展示され、多くの人の興味を集めていました。
農業試験場では今後も引き続き、オリジナル品種や温暖化に対応した栽培技術の開発、スマート農業技術の実証などを通じて、長野県の水田農業のブランド力、収益力アップに努めてまいります。
果樹試験場
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園芸作物生産振興協議会うまいくだもの部会中央講習会が開催されました
毎年恒例の園芸作物生産振興協議会うまいくだもの部会中央講習会が令和2年1月9日(木)~10日(金)に長野県松本合同庁舎で開催されました。この講習会は来年度の果実生産に反映させるため、昨年の果樹生産上の問題点を明らかにするとともに、試験場で新しく開発した技術や知見を周知する目的で開催されています。
令和元年は、10月12日の台風19号による大きな水害がありました。このため、講習会内に台風19号の被害対策に関する時間を設け、水害による泥土の堆積状況とその対応方法、台風被害に対する国の支援対策のポイントについて説明がされました。講演は、小松果樹試験場長が「果樹農業の持続的発展に向けて」のテーマで行い、果樹経営の今後の展開方向について話しました。
当場職員にとっては、現場で指導している関係者の声を直に聞くことで、開発した技術の現場での有効性が確認できたり、新たな試験研究の課題を発掘したりする機会の一つになっています。
野菜花き試験場
- 若手研究員が自主的なゼミ、機械操作の技術習得に取組んでいます
野菜花き試験場では40歳以下の研究職員が、若手ゼミと称して自主的なゼミを計画的に開催して総合的な研究力を高めています。
ほ場作業が続く時期にはトラクターの操作技術や効果的な農薬散布の方法など、実践的な業務をベテラン職員から伝授してもらうなど、ほ場実習を開催しました。また、秋から冬にかけては、講師をお願いして外部資金への応募についての制度概要、課題の立て方、計画書の書き方、説明用イメージ図の良し悪しなどを学びました。成績をまとめる時期には成績書、普及に移す農業技術等の草稿をざっくばらんに批評しあい、様々な「気づき」があったようです。
若手職員からは「互いの部の業務の特徴や工夫等の理解がより一層深まった」、「より良く理解できるよう説明するのはよい経験だった」、「同世代の職員ならではの観点で、質問力が養われた」、「企画立案など次の世代を担う勉強や自覚ができた」などの感想が聞かれました。これからも、野菜花き試験場は若手の自主的な活動を応援し、研究力を高めてまいります。
畜産試験場
- 第64回長野県畜産技術研究発表会が開催されました
令和2年1月10日(金)「第64回長野県畜産技術研究発表会」が、長野市のNOSAI長野会館において開催されました。この発表会は、県内の畜産関係者が日ごろから積み重ねた調査・研究の成果を発表し、畜産振興に資することを目的として毎年1月に開催されています。
畜産試験場の発表は「牛受精卵のプロテアーゼ処理による孵化補助技術の検討」、「畜産試験場におけるCSF(豚コレラ)感染拡大要因の検討」、「高冷地、準高冷地における子実用トウモロコシ品種の選定」、「有効積算気温によるアルファルファの生産力と播種晩限の推定」、「高冷地におけるチモシー及びオーチャードグラスの品種選定」の5題でした。松本家畜保健衛生所勤務を兼務する研究員は家畜保健衛生業績発表演題として発表し、ブロック大会の発表演題に選抜されました。また、牛受精卵の孵化補助技術の発表では、生産現場での子牛生産への貢献を期待するご意見を頂きました。
今後、発表内容をとりまとめ、普及技術として提案するとともに、頂いたご意見を参考に試験研究を進める予定です。
南信農業試験場
- 農薬に頼らないナシ黒星病対策「落葉処理」を行いました
場内ほ場には、約2ヘクタールの園地に1,000本を超えるナシの樹が植わっており、秋には大量に落葉します(1m2あたり500枚程度)。
ナシ栽培において、黒星病は大きな被害をもたらす怖い病気です。果実に感染すると黒い点ができて売り物にならなくなり、大きな減収となってしまいます。この黒星病の対策として、落ち葉の処理はとても重要になります。一部の落ち葉には、黒星病に感染した病原菌が付着しており、越冬して春に胞子を飛ばすことで感染が広がってしまいます。花の咲く春から秋にかけて行う農薬散布だけでなく、この時期に越冬場所をなくすことも重要になります。
落ち葉の処理方法としては、①集めて園の外に持ち出す、②溝を掘って埋める、③耕して落ち葉をすき込む、といった方法があります。場内では比較的手軽に行える③の方法で落ち葉を処理しています。試験場では、年末に機械を利用して落ち葉を処理する作業を実施しました。
このような落ち葉処理を行うと、やっていない場合と比べて越冬する病原菌が少なくなり、春先の黒星病の発生も格段に抑えられるのでおすすめです。
知って納得
- りんご果実の日焼けとその対策(果樹試験場)
りんご果実に直射日光が当たると、果実が蓄熱し果皮の温度が高くなります。果皮の温度が高くなると果皮の色が白や橙色、褐色に変化することがあり、これを“りんご果実の日焼け”と呼びます。
夏場の晴れの日には、南中となる時刻より1~2時間遅れて最高気温が高まります。気温が最高となる時、果皮の温度も最高となります。近年は、夏場の最高気温が高い日が多くなり、日焼けの軽減には、果実の蓄熱を回避する必要があります。そのため、日光を遮る必要がありますが、収穫直前の果実の着色には一定の日光が必要となります。高温となる夏場に収穫となる早生品種「シナノリップ」では、日焼けの軽減を図ると同時に、果実の着色を妨げない技術確立のため、現在、果樹試験場では、この目的が達成できる被覆資材の検討を行っています。
2月の行事予定はこちらをご覧ください。